〜冒険者編〜第12話

警戒してこっちを見ていたオークもランが突進するのと合わせるようにこちらに向かってきた。

「セイ!」

ランが逆袈裟に振りぬく。オークは真っ向からランの剣に自分の剣をぶつけに行く。

――ガキィ

金属同士の鈍い音が周囲に響き渡る。

「グッ!?」

オークの怪力が生み出した膂力はランの体ごと弾き飛ばされ、地面を削りつつ滑ってくる。

「いつつっ……君って馬鹿力なんだね」
「私が相手よ! ロロ援護!」

腰から二本のダガーを抜き放つ。姿勢を限りなく低くしてオークを狙う。

「氷結の精霊よ! 我に仇なす敵に束縛を与えよ!」
「ブッ!?」

ロロの呪文が完了し、オークの足元から凍り始める。ロロが氷の精霊の力を借りてオークの足を凍りつかせ動きを阻害する。苦し紛れに剣を振るうが、そんな腕だけで振るった一撃に当たるほど私は甘くは無い。

「フッ!」

ダガーがオークの体を滑っていく。手、腕、肩、胸、腹、足、顔。二振りのダガーを巧みに使ってオークを切り刻む。オークの分厚い肉に阻まれて傷自体は浅いが小さい傷も数が多ければ十分相手にダメージを与えることは出来る。

「ブブッ!?」

体中から血を流すオークだったが、剣を取り落とすことなくその醜い眼に憎しみの炎を宿し、視線を私に向ける。

「フェルちゃんさすがだね! よーし今度こそ僕もやってやるぞ!」
「ロロ合わせて!」
「……うん!」

「「氷結の精霊よ! 我に仇なす敵を凍てつく茨で縛り上げよ!」」

先ほどロロが使った精霊魔法よりも強力なのを二人で発動させる。オークの周囲の空気が一気に下がり、地面から氷で出来た茨がオークの体を縛る。茨に生えた棘がオークに突き刺さり苦痛の叫びを上げる。

「ナイスだよ! 二人とも!」

動けないオークに向かってランは遠心力を上乗せした重い一撃を叩き込んだ。ランの一撃はオークの腹部に命中し、大きく掻っ捌いた。血飛沫が舞い、オークの臓物が撒き散らされる。

「いっちょ上がりっと」

ランは剣を一振りして血を飛ばすと鞘に戻した。

「お疲れ様ラン。ロロもちゃんと合わせてくれて助かったわ」
「お疲れ〜僕たち全然いけるね!」
「……二人とも凄かったよ。あんな大きい魔物倒しちゃうなんて……とってもかっこよかった」
「へへありがとー」
「さてと」

オークの死体に近づいてその鼻を削ぎ取る。

「フェルちゃんその鼻どうするの?」
「ん? オークを討伐した証になるのよ。死体全部を持っていくのは大変でしょう。だから魔物の一部を持っていけば討伐したって証拠になるのよ」
「へーそうなんだ」
「そっ。オーク一体いくらになるかは知らないけどね。あとオークは無いみたいだけど魔物の中には皮とか牙が売れたりするから。二人も知っておいてね」
「はーい」
「……わかった」
「それじゃ戻りましょうか。急げばさっきの人たちに合流できるはずだから」
「そうだね〜怪我してたし、心配だよ」
「……他の魔物に襲われたりしたら大変だもんね」

二人の同意も得て、小走りに追いかける。


森を出たところで森に入ろうとしている女性を必死で止めるラウンドシールドの二人がいた。

「どうしたんです?」
「おお! お前ら無事だったか心配でこいつが森に飛び込もうとしてたぐらいだぞ」
「ああそういうことでしたか」

それだけで全て察した。お姉さんは私たちを心配して一人で森に戻ろうとしたところをお兄さんに止められたとそういうことか。

「大丈夫ですよ。私たちはまだ子供ですがそれなりに訓練は積んでいます。これが証拠です」

私は切り取ったオークの鼻を彼らに見せる。

「倒したのか……オークだって弱くはない魔物なんだがな」
「そんなことなかったよ〜。弱かったよねロロちゃん」
「……ランとフェルがいたからだよ。私はお手伝いしただけだから」
「それは私も一緒。私たちだから出来たってことよ」
「こりゃ……とんでもない新人が入ってきたかもしれんな」

お兄さんが私たちを見て苦笑いを浮かべていた。

「ところで戻りませんか? 子供たちも疲れてるでしょうしお兄さん方もきちんと怪我の手当てをしないといけませんし」
「ああ……っとそうだ自己紹介がまだだったな。俺はカーン。そっちのがデル。こっちがフランだ」
「助けてくれてありがとう。助かった」
「あなたたちのおかげで子供たちも助けられたし、命拾いしたわ。本当期待の新人ねあなたたち」

それぞれ声を掛けつつ握手を求められたのでそれぞれ握手を交わした後、移動を開始した。 ランとロロに子供の相手をお願いして私はカーンさんから情報収集を行うことにする。

「ところであの子供たちはなぜ森に入ったのでしょうか?」
「なんでも木の実を拾いに来てたらしい。その最中にオークに襲われたんだと」
「オークってアスリアの森に出るんですか?」
「いやオークが出たのは初めてだ。ゴブリンやダガーウルフなんかは出るんだがな」

ダガーウルフというのは犬歯がダガーのように大きく発達した狼だ。でもなるほどね。豊穣の森の霧といいアスリアの森でのオークの出現といい、何かが起こってる雰囲気があるわね。ダドリーさんたちが何か掴んでるといいけど。

「こっちも聞いてもいいか?」
「はいなんでしょうか?」
「君たちは訓練を積んだって言ってたけど誰かに師事してたのかな?」
「ええ。父と母、それに知り合いの冒険者の方々に師事していました。六歳からみっちり教えられましたね」
「六歳!? そんな小さい頃からだなんて……凄いんだな」
「カーンさんたちだって十分に凄いですよ。自分が傷つけられながらも守らないといけない人は完璧に守りきったじゃないですか。なかなか出来ることではないと思いますよ」 「君たちがいなければやられてたかもしれないけどね……」

ハハッと乾いた笑いを上げるカーンさんだった。

「まぁともかく街に戻ったらご飯でもご馳走させてくれ。お礼だ」
「ありがたく頂戴いたします。ランは食いしん坊なんで覚悟しててくださいね」
といってやるとカーンさんは再び乾いた笑いを上げるのだった。



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