桜の悪友

桜並木の花弁が 幾億散って 世界から隠された
永久に変わった 唯一と呼べる 我が悪友
桜の季節に重ね 酒を傾けるは お前に送る弔い酒
追憶に揺れる顔 思い出す度 涙を堪えるのは何度目か

風に踊る一片を 追い掛ければ お前の許へと行けるか
戯言を思っては 酒を器に注ぐ 隣に居るのだと信じて
潤わぬ渇きなど 忘れてしまい 私は刀を片手に舞い踊る
歌など歌えぬ私 だがこの舞を お前だけの為の鎮魂歌

雄雄しき逞しさ 滑らかな力強さ 壮大な勇ましさ
覗かせる優しさ 流れる様な華麗さ 垣間見える魅力
時に花弁と遊び 時に迷い無く断つ 飾るのに飾らぬ誇り
これが私が見た 悪友の背中だ 美しき我が自慢

桜の舞う季節を お前の踊りで 彩るのは証明
間違いで無いと 一つの真実を 欲している浅ましさ
だが醜かろうと 止められぬのも事実 縁を信じたい
全て忘れてくれ 全て憶えていてくれ この葛藤は届かぬか

桜を愛した私と 桜を慈しむお前 桜が我らの絆
だが我が悪友よ お前が居ない今 幾ら桜が枯れようとも
花が散ろうとも もう勝てないのだ 変えられないのだ
桜を愛する心は 変わらずとも お前が消えた哀しみに

私をも桜と共に 隠されるならば 幸せだろうが
冥界からの迎え 未だ来る気配無く 生に縋る弱さ
お前は笑うのか 怒り狂うのか その返事すら貰えない
だから信じては 酒と舞を送るのだ 桜の調べに乗せて

酒が乾いたなら また何度でも 注ぎに来るが
私が桜に隠され お前の許に 辿り着けたならば
その時には必ず 教えておくれ 我が舞の感想を
そしたらば私は きっと涙は止んで 笑えるから


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