風鈴

限られた短き一時
爽やかな風に優しき音色を零す
小さき涼しさのプレゼントに
心の安らぎを保たせる

塀の隅の木陰に零れ落ちた
甘い欠片に群がる蟻も
せっせと仕事をこなし
一つの世界の縮図を示す

世話しなく泣き叫ぶ蝉も
季節の一興
聞こえる度に思い出させる
夏の彩り

陽炎の中に揺れた幻は
暑さに参った心が魅せた幻想か
己の心に刻まれた痛みの
忘却を拒む追憶か

太陽の熱に溶けてしまいそうな世界も
風の中に揺れる風鈴に
小さな紛らいを求め
苦情を漏らしてはやり過ごす

遠くに聞こえる子供の笑い声は
遠き日を思い出させるが
重なり合う音達が
懐かしさと共に心を取り戻させる

再び静かに鳴った風鈴の音色は
季節の思い出の一ページを
未来へと紡ぎ
人々の心の奥に

次来る季節まで揺れている


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