ぬいぐるみ

人との関わり方を知らぬ少女
孤独に生きるも隔絶とは違う
他者の人生の心に触れるからこそ
自身の心にも渡したい物語が生まれる

だけれど知らない関わり方
行き場の無い思いは
心に溢れ過ぎて
少しずつ蝕んで行く

不安がる大人はぬいぐるみで
寂しさを紛らわせる様にとプレゼント
しかし自らが関わり
救い出そうとはしない

それでも少女は思いの行き場と
ぬいぐるみに話しかけ始めた
何も答える事も無い
ただの物体に過ぎずとも小さな支え

怒り悲しみ寂しさを誤魔化したい一心で
紡がれる言葉は津波の様
だけれど何も返って来ない虚しさに
心は再び崩壊を辿る

成長すれども相手はぬいぐるみだけ
でも選べる者など在りはしない
誰かが一つ手を差し伸べれば
変わっていたのかも知れずとももう遅い

ぬいぐるみしか知らない
そんな少女を救い出したいと見詰める者は
ある日行動に移した
ぬいぐるみから声が聞こえるように

少女と少しずつ成り立って行く会話
山の様な思いに疑問に答えを渡す
納得出来るまで言葉を交わし
心の形を修復して行く

少女がぬいぐるみだけで良いと頷いてしまう前に
少女の心に触れた少年は
ぬいぐるみを通して約束を交わし
会話を断った

少女は断たれた関わりに悩んでは
押し潰されそうな心に
交わした約束を辿る
再び孤独に落ちる事を恐怖して

少女が向かった先に会った者は
待ち続けた少年と
光り輝く夜空
少女に気付いては虚空に言葉を紡ぐ

「流れ星には願いを叶える力がある
 既に一つは叶っているから
 これから新しい願い事を
 僕と探しに行こう」

少女は抱えていたぬいぐるみを
少年に渡しては再び約束を交わす
自身の心が確かにある事に
喜びと不安を感じながらも

「これからは私と
 想いを共有して」
思いが想いに変わったのは
既に互いが理解している

だってもう繋がっているのだから


↑PageTop