喪失の痛み

僕を思う誰かの優しさすら
拒み突き放しては
孤独を作り上げようと
拒絶を繰り返す

一人ひとりと諦めては
僕から離れ行く人々に
僕は安堵と共に頷く
これで良いのだと

だって僕は弱い人間だから
喪失の痛みになんて耐えられる訳が無い
優しさを受け取った所で
何かを返して上げられる事も無い

ならば最初から何も持たなければ良い
優しさを向け様としてくれた御礼は
僕が孤独の痛みにだけ
耐え抜く事

涙は涸れて
笑顔は朽ち果てた
それが僕が選び取った答えの
世界が科した罰

だけれどそんな僕を許さぬ
一人の女の子は
僕を見ては涙を潤ませ
手を差し伸べ続ける

どんなに拒絶を繰り返しても
嫌われる様に振舞っても
諦める事無く涙を我慢しながら
微笑んでは優しさを向けて来る

予想も出来なかった現実に
僕は堪え切れず
君に僕の本心の全てを
乱暴に投げ付けた

だけど君は泣きながら笑って
抱きしめては囁くのだ
「私も貴方を失いたくないよ
 私も喪失は耐えられないんだから」

積み重ねてきた今までの物語すら
打ち砕く様に
たった一つの言葉が
僕を優しく包み込む

取り戻した笑顔と涙で
ぐちゃぐちゃになってしまった自分すら
君は受け入れてくれるのだろう
ならば僕は失わない様にしないと

だって僕はもう
君を手に入れてしまったのだから
喪失の痛みには耐えられない
出来る事は失くさぬ様に大切にする事だけ

僕の視線の向く先には
幸せそうに君が笑った


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