「ただいま」 家のドアを開けた途端、奥からいい香りが漂ってきた。 「おっうまそうな匂いだな」 「僕の家のパンだね〜」 食卓のテーブルには所狭しと料理が並べられている。足りなかったテーブルと椅子も揃ってる。その端の椅子ではもうダリ父さんが酒をビンのまま煽っていた。 「おかえりなさいみんな。お腹空いてるでしょうすぐに食事にしましょうか」 「おかえり〜ラン。しっかり稽古してきた?」 キッチンでまだまだ料理を作っていたお母さんとリサーナ母さんが振りかえって帰宅の挨拶をしてくれる。 「疲れたよ〜お腹も空いた〜」 ランがリサーナ母さんにくっついて甘えている。安心しきった顔して本当に可愛いんだから。 「おうランこっち来い。一緒に酒飲もうぜ〜」 「飲んでいいの?」 「ダメに決まってるでしょ。てかダリ父さんもランにお酒を飲ませようとしない!」 じろりと下から睨め上げる(ねめあげる)。私の身長だと座っていてもダリ父さんを下から見上げるしかない。む〜子供の体とはいえこんな酔っ払いを下から見上げなきゃいけないとはなんか屈辱。 「おいおいフェル可愛い顔をそんなにむくれさせてどうしたんだ?」 「なんでもないよ!」 全く全くダリ父さんは絡み酒だから困ったものだ。飲むなとは言わないけどこれがなければいいのに。 「フェル〜こっち手伝ってくれない?」 「は〜い」 いつの間にか完成されていたお母さんの料理をテーブルに運ぶ。 「それ終わったら先に食べてて」 「お父さんがまだだけどいいの?」 「大丈夫よ。もう少ししたら帰ってくるらしいから。それにまだまだ作るから足りなくなることはないわよ」 「そうよ。わたしとアンナが作ってますからね。フェルちゃんは気にせず好きなだけ食べて頂戴。ランとロロちゃんもね」 リサーナ母さんの言葉に目を輝かせる二人。その眼を私に向けてくるから堪らない。 「分かった分かった食事にしましょう」 私はひっそりと誰にも気づかれないように笑みを浮かべて席につく。 「それじゃいただきます」 「「いただきます」」 私の後にランとロロも続く。鍛錬で相当疲れてるはずなのにその食欲は収まることがなく次々と料理を胃の中に納めていく。かくいう私も二人に負けないくらいの量を食べている。料理上手なお母さんとリサーナ母さんの料理はどれだけ食欲がなくてもついつい食べてしまう。今は育ち盛りだからいいけど将来は気をつけなくちゃ。我慢するのが辛そうだけど。 「ただいま〜」 お父さんの声が玄関からした。いつものようにお母さんが出迎えに行く。玄関の方から2,3言話し声がした後、二人仲良く入ってきた。と同時に私は二人に直球で言葉を投げかけた。 「お父さんお母さんお話をお聞きしたいので後でお時間頂きますね」 「えーと何を怒ってるのフェル?」 「怒ってません。ただ話次第では怒るかもしれません」 「うーん隠すつもりはないんだけどね。まぁフェルが知りたいなら教えるけどね」 お父さんは思ったよりもすんなりと話してくれるみたいだ。まぁ別に話しても問題ないってことなのかもしれないけれど。 「さぁ先に食事にしようフェル」 「そうね。お話楽しみにしてるから」 「どうやっても逃れられないみたいだね」 諦めたのかお父さんは苦笑いだ。
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