〜冒険者編〜第13話

門のところで子供たちとは別れ、私たちはギルドに戻った。

「俺たちは治療を受けてくる」
「私たちは依頼を完了してきます」

カーンさんたちは奥にある治療室に向かう。冒険者はギルドで低価格で治療が受けられるため大変重宝している。
それを見送った私たちはいつものお姉さんがいるカウンターへ向かう。

「お姉さん薬草集め終わりました」
「あ、おかえりなさい。袋もらえる?」
「どうぞ」

三人分を纏めて渡すとお姉さんはその場で簡単に中身を確認すると、一つ頷いて笑顔を浮かべた。

「お疲れ様でした。それではこちらが報酬となります」

お姉さんは半銀貨を九枚カウンターの上に置いた。

「これが今回の報酬とです。失くさないようにね」
「はい確かに。あとこれなんですけど……」

私がオークの鼻をカウンターに置くとお姉さんの目がどんどん見開かれていく。

「あの〜これってオークの鼻ですよね?」
「ええそうですよ」
「薬草の採取にアスリアの森に行ったんですよね?」
「ええそうですよ」
「アスリアの森にはオークはいなかったはずですけど……」
「それがいたんですよ。今治療室にいらっしゃるカーンさんパーティが襲われていまして、私たちは助けに入ったのです」
「僕が止めを刺したんだよ!」

後ろから自慢する声が聞こえるが気にしないでとお姉さんに手振りで伝え、そのまま話を続ける。

「……あなたたちが嘘をつく必要性はどこにもないわよね。分かったわ。私からギルドマスターに離しておきます。後日話を聞くかもしれないからそのつもりでね」
「分かりました」
「それにしてもオークは討伐ランクD相当だったはずなんだけどね。やるわねあなたたち。とりあえず討伐おめでとう。これが討伐報酬ね」

もう一枚半銀貨が置かれる。

「ありがとうございます。それじゃ二人とも治療室に様子を見に行ってみましょうか」
「おう。三人とも依頼を達成できたみたいだな」

いつの間にかダドリーさんたちが後ろにいた。気配を全く感じず近づくなんて悪趣味な。

「そっちは治療室だが誰か怪我でもしたのか?」
「いえそういうわけではないです。依頼中にオークに襲われていた冒険者を助けたのです。それでその人が今治療中でして」
「オークってお前らがいったのはアスリアの森じゃなかったのか?」
「ええ。でもオークが出ました。なにかがおかしくなってるのかもしれません」
「豊穣の森と同じようにってことか……」
「ただの推測ですけどね」
「むむむ……」

ダドリーさんが眉間に皺を寄せて考えるがミェルさんが後ろから茶々を入れる。

「ダドリーが考えたってしょうがないんだから。さっさと行きましょうよ」
「なんだと!」
「はいはいこんなとこで騒がない。私たちもその人たちに会ってもいい? 挨拶しときたいの」

二人を仲裁しつつ、システィさんが水を向けてきた。

「ええ。では一緒に行きましょう」

ノックして治療室に入る。

「失礼します」
「キャッ」

中では半裸のカーンさんが包帯を巻いているところだった。そっちに免疫のないロロが顔を手で隠してシスティさんの影に逃げ込んだ。

「カーンさん怪我の具合はどうですか?」
「ああ。やっぱり肋骨をいくらかやられてたみたい。ただ折れてはいないのが不幸中の幸いかな」
「デルさんの腕のほうはどうです?」
「僕の方も折れてはいないよ。でも罅が治るまではこの通りかな」

ぐるぐるに巻かれた右腕を掲げた。

「それではしばらく冒険者は休業しないといけませんね」
「ほんとだね。体が鈍らないようにしなくちゃ」

体が資本の冒険者らしい考え方だ。

「よう俺たちの弟子が世話になったらしいな」

後に入ったダドリーさんが片手を上げながら気楽に話しかけた。

「こちらは私たちの師匠である冒険者のダドリーさん、ミェルさん、システィさんです。でこちらがカーンさん、デルさん、フランさんです」
「初めまして皆さん。今回はお弟子さんのおかげで命拾いをしました」

カーンさんが頭を下げると、後ろのデルさんとフランさんも一緒に頭を下げる。正直気恥ずかしい。

「いやなに。こいつらが初めての仕事で人助けをするとは思っても見なかったが鍛えた甲斐があったってもんだ。だがお前らもお前らで立派じゃないか。子供を守るための負傷だ。自慢してもいいくらいだぞ」
「いえ自分たちはまだまだです。もっと精進しなければなりません」

この台詞前にどこかで……。

「ふふふ」
「笑わないでくれよ!」
「ふふ……すいませんカーンさん。馬鹿にしたわけではないのです。ただ昔ダドリーさんも私の父に似たようなことを言っていたので思い出してしまっただけです」
「俺そんなこと言ったか?」
「ええ言いましたよ」

ダドリーさんとカーンさんが互いに目を合わせるのでそれが余計に面白く感じてしまう。

「カーンさーんそろそろご飯食べに行かない? お腹空いちゃったよ」

ランがお腹を押さえながら間延びした声を上げる。

「ああそうだね。俺たちの治療も済んだし行こうか」
「わーいおごりおごり!」
「なんだ奢りって?」
「助けたお礼ということでご飯を奢ってくださるそうです」
「そうなのか……よし俺たちも半分出そう。初依頼達成記念だたらふく食うといいさ」
「わーい! ありがとうダドリーさんカーンさん」
「よしそれじゃさっそく移動しようか。行きつけの場所があるんだ。そこでいいよな?」
「あまり高くなければ大丈夫です」
「心配するな。安い、うまい、大盛りの料理を出してくれる店だからな」

その後私たちは場所を森の妖精亭に移したらふく依頼達成とこれからに期待を膨らませながら一夜が過ぎ去っていった。



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