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~冒険者編~第4話

「今日は森に入らずここで野営。一日で抜けるから朝早くの出発だ。今日は早めに休めよ」

ダドリーさんがこれからの予定を話す。時刻は太陽が頂点を少し過ぎた程度、夜にはまだまだ早い時間だ。

「それじゃいつもどおり俺たちで薪集めてくるからそっち飯の方頼むな」
「早くお願いね~」
「そっちも気をつけてくださいね」

ダドリーさん、ラン、ロロが薪集め。私、ミェルさん、システィさんで食事の用意をすると旅の間に自然と決まった。
落ち葉を集め、炎の精霊を召喚し、火をつけてもらいとりあえず火を確保する。その火を使って料理を始める。といってもメニューは鍋に水を張ってその中に保存食の干し肉や、芋を入れて煮込むだけの簡単スープと黒パンを用意するという手抜き感漂うメニューだ。

「旅の辛いとこは食事が単調になりやすいとこよね」
「仕方ないですよ。保存食も種類が多いわけではないですから」

堅く焼いて腐りにくくした堅焼きパン。干し肉、芋や豆、チーズに干した果物。ダドリーさん達が用意してくれた保存食のラインナップだ。今日のようにスープにしたり、パンの間に肉とチーズを挟んだりと工夫して食べるようにしているがどうしたって限界はあるし、飽きだって来る。

「それもこれもこの森を抜けるまでよ。ここさえ抜ければウラーナまではあっという間だし、森の中には食べられる果実もあるから多少はましになるでしょう」

森の民であるエルフはきっとそういうのを見つけるのが得意なのだろう。システィさんがスープの様子を見ながら教えてくれる。
弱火でじっくりと煮ているとダドリーさんたちが戻ってきた。火の隣に置かれた薪をすぐに入れて火力を上げる。干し肉も水分を吸って柔らかくなったし、芋にも十分火が通ったのを確認して各々の器によそう。

「カーッ! 旅の楽しみは食うことだけだからな。この時間を待ってたぜ」

スープの半分以上を一気に平らげた。

「多めには作ってますが、全部食べないでくださいね」
「バグバグバグ」

全く聞く耳無し。もう注意するのも無駄と切り替え、堅焼きパンをスープに浸して、ふやかしながら食べる。スープの塩味が付いた堅焼きパンはそのまま食べるよりかはましぐらいの味にしかならない。そのまま食べると硬すぎて噛み切れず、味がしないというただ腹に貯まればいいといった食べ物だ。

「いつもどおり昼のあいだは火の番お願い」
「大丈夫です。皆さんは休まれててください」
「お願いね」

先に食事を終えたミェルさんとシスティさんが馬車に戻って寝る準備をしている。
大人組は夜番をするため昼の間でも休める時は休んでもらっているのだ。本気になれば三日くらいは寝ずに行動することはできるそうだけどそのあとが辛いためやりたくないそうだが。

「ダドリーさんもいつまでも食べてないで早く休まないと夜がきついですよ」
「ムシャムシャムシャ……おうあと一杯食ったらそうさせてもらうぞ」

すでに四杯目に突入しているというのにまだ食べる気だった。でも作った物をおいしく食べてくれるのは嬉しいけどね。

「ランとロロはどうやって過ごす? 私は夕食の用意しながらこれやるけど」

私は懐から木材とナイフを出して見せながら言う。木を削って簡単な模型を作るのが新しく身に付いた趣味だった。能力を使うときに必要なイメージを養うために始めたのだがはまってしまいずっと続けており、この旅の間もなにかと暇を見つけてちょこちょこ作っているのである。

今はチェスのビショップの駒を掘っている。というのもミェルさんに「トランプもいいけど別の遊びない?」と聞かれたからである。ちなみに将棋にしなかったのは見た目の問題と漢字が使えないからだ。
とはいってもこの一週間の旅程で仕上げるのは時間的に難しい。これから暇を見つけて作っていくつもりだ。
ランは勢いよく立ち上がり、森を指差して言う。

「森の中探検してきてもいいよね!」
「ダメに決まってるでしょう! 全く言うとは思ってたけどこうも早く言い出すとは思わなかったわよ」
「え~せっかく目の前に森があるんだよ~。森と言ったら探検じゃない?」
「その山があるから登りますって短絡的考え方やめなさいよ。この豊穣の森は危険だってダドリーさんが散々言ってたでしょうがなのになんで探検なんて言葉が出るのよ!」
「こうもいってたじゃん。危ない獣が出るのは森の奥深くだって。だから浅いとこなら大丈夫だよね!」
「なわけあるか!」

――スパン!

私の右手がランの頭を叩く。

「あれ?」

無意識のうちに手を出していた。自分でも叩いた後に気づいたぐらいだった。

「む~わかったよ。じゃあ向こうの方で素振りしてるよ」

拗ねたのか頬を膨らませて少し離れたところで素振りを始める。ちゃんと目の届くところにいてくれるのは私の忠告を受け入れたということだろう。

「……私はこれを読んでるね」

ロロが取り出したのはお母さんが教えてくれた魔法の知識を記したロロ特製のメモ帳だ。これを肌身離さず暇を見つけてはめくって読み返したり、思いついたことを書いたりしている。
今回もペラペラと気になったところを読んでいく。

「……フェルは今なにを作ってるの?」
「新しい遊びに必要な道具よ。といってもこの旅程の間には作り終えることはできないだろうからウラーナに着いてから遊びましょう」
「……フェルが作る遊びはいつも楽しい。だから楽しみ」

「そう言ってくれると私も嬉しいわ」 いよいよ明日は森に突入だ。ちょっと楽しみに思いつつ、手を動かすのだった。



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