「どうしたの?」 「あの人がパーティに入れとしつこく絡んできただけですよ」 「フェルちゃん腕大丈夫?」 ランが掴まれていた腕を矯めつ眇めつ何度も見ている。 「大丈夫問題ないわ。それでお姉さん無事に私たちの登録は終わったのでしょうか?」 「ええ待たせちゃってごめんなさいね。あなたたちの冒険者登録は無事に終わったわ。これがその証拠の冒険者カード。受け取って」 お姉さんが三枚のカードをカウンターの上に置く。 ランは喜び勇んで、ロロは少し緊張しながら受けとってそこに刻まれている自分の名前を食い入るように見つめている。 「それでは冒険者のランクについて説明します。冒険者には自分の強さを表すランクが設定されてます。ランクはそれぞれFからSまでがあります。SとAが金、BとCが銀、D以下は銅のプレートになります。ランクは冒険者として仕事をするうちにこちらのほうで評価してあげてもいい実力が認められたら試験を受けることが出来ます。ランクを上げることによってより実入りのいい仕事を請けることも出来ます。またランクが上がっても今までのランクの仕事が請けられなくなるわけではないので」 何度もしてきたのだろう淀みない説明は立て板に水の如くだ。 「だけどその分危険度も上がりますよね」 「その通り。だから自分の出来ること出来ないことの見極めはしっかりね。自分の分を超えた無茶をしちゃだめよ」 「分かっています。S以上のランクはあるのでしょうか?」 「あります。SSランクという国が認めた冒険者に与えられるランクです。今世界に八人しかSSランクの冒険者はいらっしゃいません。あなたたちもSSランクになれるように頑張ってね」 「SSランクか〜……なれれば冒険し放題かな?」 「かもしれないわね」 「……無理だよ〜……」 わくわくと今にもどこかに飛び出していきそうなランと弱気になっているロロ。対照的な二人の反応を横目で窺いつつ、お姉さんを促す。 「冒険者が依頼を受ける場合、まずあそこの依頼が貼り出されてる掲示板から依頼を選んでください。依頼を決めたなら依頼に振られた番号を口頭でおっしゃってくだされば、依頼の説明と手続きをいたします。依頼はランクごとに分けられて貼ってありますので受けるときは気をつけてください」 「あそこだね。よしさっそく見てくるよ!」 「待ちなさい! まだ説明は終わってないし、今日は依頼は受けないわ」 依頼掲示板の方へ走り出そうとしたランの首元を引っ掴んで阻止する。 「受けないの!?」 「受けない。今から受けてもしょうがないでしょうが。もう日も沈むわよ」 「ちぇ〜残念」 手を離し、手だけでお姉さんに先を促す。 「依頼を達成されましたら、カウンターのほうへお越しください。手続きと報酬の受け渡しを行います。依頼を失敗または達成困難と判断された場合もカウンターにいらしてください。依頼を達成できなかった場合違約金が発生します。またそれが何度も続く場合、冒険者登録の抹消という可能性があるので十分に気をつけてください」 「登録を抹消されてからもう一度登録というのは出来るのでしょうか?」 「出来ません。ですので念を押しますが依頼を受けるときは十分に検討してから受けてください。以上が依頼時の流れと注意点です。とりあえず今日はこれぐらいにしておきましょうか。一辺に言われても分からないよね」 私の両隣で疑問符と煙を上げ始めてる二人に呆れつつ、お姉さんの気遣いに感謝を述べたところでギルドにダドリーさんたちがやってきた。 「ようお前ら無事に登録できたか〜?」 片手を上げて真っ直ぐに私たちのとこに歩いてくるダドリーさん。その後ろにいつもいるシスティさんとミェルさんの姿はない。 「はい無事に登録を済ませることは出来ました」 「見て見て僕の冒険者カードだよ!」 両手でカードを持ってダドリーさんに見せる。ダドリーさんも相好を崩してランの頭をくしゃくしゃと撫で回す。 「システィさんとミェルさんはどうしたんです?」 「あいつらは留守番だ。宿でおとなしく休んでいるだろうよ」 「宿無事に確保できたんですね」 「ああ。いつも利用してる宿があるんだわ。最初のうちは俺たちが払うが途中からお前たちが払ってもらうからな」 「もちろんです。いずれご飯を奢らせてもらいますよ」 「すっごいのご馳走できるくらい稼いでみせるからね!」 「……期待しててください」 「おう楽しみにしてるぞ。それじゃ宿に案内するから付いてきてくれ」 私たちはギルドを後にして宿に向かっていた。今だ嬉しそうにカードを眺め続けているランの手首を取って引っ張っている。なんだか言葉が悪いが犬にリードをつけて散歩している気になってくる。 「ここだ」 歩いて数分。ギルドが面している大通りからいくつか路地に入った場所にお世話になる森の妖精亭があった。
〜冒険者編〜第8話